試験が終わったはずなのに、しばらくブログが更新されていなかったので、死んだんじゃないかと思った人もいるかもしれませんが、生きてます。


しかし追試になると1教科に200ユーロ払わないといけないのはいやだな。



水曜の夕方に最後の試験があったのですけど、その日の昼間にクレモナに住んでいる日本人の友人から電話がかかってきて、今日夜からトリノに遊びに行っても良いか?といきなり言われました。遊びに来る約束は前からあって、試験が終わった3日後辺りという話だったのですけど、変更したそうです。その時、ああそういえば、この人は前からこうだったということを思い出しました。

それで夜に彼とその友達が来たのですけど、ウチの狭い部屋に男三人むさ苦しく寝てから、次の日にトリノから北西のサクラ・ディ・サン・ミケーレという修道院に行きました。フランス国境近くにスーザという町があるのですけど、修道院はその近くの山の上に聳え立っています。で、なにやら山の上に修道院がそそり立っていて、建築もすごいというので、前から行きたかったのですが、ガイドブックを見てもインターネットで調べても電車で近くの駅まで行って、そこからタクシーで行くしかないようで、なかなか行く機会がなかったのです。


それで今回の行き方は、まずトリノ・ポルタヌォーヴァ駅(駅が廃止されトリノ駅からになったかもしれません)から、スーザ行きの電車に乗って、アヴィリアーナ駅(avigliana)で降りてタクシーをつかまえようと計画してその駅で降りたのですが、実際はアヴィリアーナの次の駅サンタ・アンブロージョ駅(Sant’ambrogio)のほうがより修道院には近いようです。ちなみに切符代は片道2ユーロ。

まあそんなこんなで、アヴィリアーナ駅でタクシーを探すことになったのですが、友人が駅員に「タクシーはどこで拾える?」と聞くと、どこをどう間違ったのか「それなら俺の車で30ユーロで連れて行ってやるから、帰りは歩いてサンタ・アンブロージョ駅まで歩いていくのが良いぜ、歩きでサンタ・アンブロージョ駅までは2時間ぐらいだ。」と見るからに怪しげなイタリア人の駅員が言い出しました。駅長らしいイタリア人も「お前ら日本人だろう」とか言って、なんかふてぶてしい態度で馬鹿にしている感じでした。それでその時思ったのは、これは西部映画とかで旅人がある町に着いて、保安官の事務所に行ったら、悪保安官に馬鹿にされている感じに似ているなと思いました。

それなのでとりあえず怪しいから、まずはタクシーに値段を聞いてみようということにして、“どこにタクシーの電話番号がある?”と聞くと「ウラの広場に張ってるよ」とそっけない感じで言われて、とっとと駅室を後にしたのですけど、広場に行ってもそんな物は見つかりませんでした。それで広場にいた別の駅員たちに聞くと、「ああ、そこのbar(バール)の店内に貼ってるよ」とさっきの駅員とは違い、親切に教えてくれたので、中に入るとありました。

タクシーの電話番号に友人が電話すると、タクシー代は往復で40ユーロ、修道院の見学中も待っていてくれるという答えが返ってきて、すぐに来てくれるということでした。どうもさっきの駅員は、ボッタくっていたようです。


それでしばらくバールの前で待っていたのですけど、向こうから黒塗りのイタリア高級車ランチア・テージスが走ってきて俺たちの前で停まったので、まさかこれがタクシーじゃないだろうな?と思うと、タクシーでした。このランチア・テージス、実は今のローマ法王も乗っている車でして、日本じゃハイヤーじゃないかと思うようなタクシーに乗り込んで、道は修道院サクラ・ディ・サン・ミケーレの山のほうに向かいました。

行く途中に修道院が山の上に立っているのが見えたのですけど、確かに頂上にそそり立っていました。で、修道院の入り口に着いてから、運転手のおっちゃんが「一時間もあれば中は見れるから、ここで待っているよ」ということで中に入ってみたのですけど、実はもう12時を過ぎたところで、これから修道院内の教会は昼休みに入るから見学は2時半までできないということでした。そんな訳で、またタクシーのおっちゃんのところに戻って訳を話すと「じゃあこうしよう、また3時半ごろこっちに迎えに来るから、その頃連絡してくれ。値段は一緒の40ユーロだ。」と言ってくれたので、かなり親切なイタリア人だなと思いつつ、そういうことにしました。


それでタクシーのおっちゃんが去ったあと、ボケーっと教会が開くまで待っていたのですけど、やっと開いて中に入ると、玄関からいきなり石の長い階段が続いていて、山の中の教会なんだなということを実感させられる作りになっていました。下がその写真ですが、ガイドブックには「死者の階段」と書いてありました。

それでその階段を上がりきるとまた外に出てしまい、今度は周りの山々やトリノのほうの平原まで見渡せる景色になっていて、改めて我々が高いところまで来ているのが分かりました。それで次は別に、建物の中に入る扉があるので入ってみると、そこが聖堂でした。なんかドラクエの城みたいな作りです。

ちなみにこの修道院で一番すごかったのは、教会の裏手にある廃墟と化した昔の建物の壁でした。下の写真がそうなのですが、教会の上からそこを見下ろすと中庭のように見えて、それを囲む廃墟とその外側に広がる下の街の景色によって、まるで空中庭園のように見えるのがよかったです。教会からそっちの廃墟のほうに降りることもできました。ちなみに一番最初にある写真は、教会の入り口正面の写真です。

教会を見終わったその後、早速タクシーに連絡して迎えに来てもらうことにしたのですが、そこはやっぱりイタリア人、電話してから来てくれるまで結構時間がかかりました。しかし待っている間、これでもし来なかったら、いやだなぁと思ったのですけど、行きのタクシー代もまだ払っていないのだから、来ないわけが無いと言うことに気付きました。それで次に思ったのが“しかしあのタクシーのおっちゃん、もし俺らがそのまま呼び出さないで内緒で帰ったらどうするつもりなんだ?”と考えると、改めて人が良過ぎるということに気付きました。

それで迎えに来たランチア・テージスに乗り、アヴィリアーナ駅まで帰ったのですけど、運転手のおっちゃんが「まだ次の電車まで時間があるなら、そこのバールでカフェでもどうだ?」と言うので一緒に入ると、コーヒーまでおごってくれました。どこまでも人が良過ぎる。ちなみに料金ももちろん約束どおりの40ユーロでした。別れ際に、くれた名刺の電話番号を指して「これが俺の番号だから、トリノで何か必要なときは呼んでくれ。トリノも仕事に行くよ」と言ってました。多分この先タクシーを使うようなことは無いと思うのだけど、くれた名刺にフィアット・ディーノのイラストが印刷されているのが、俺的にはポイントが高かったです。


ちなみにサンタ・アンブロージョ駅から修道院に歩いて来るのも、歩いて帰るのも大変な気がしました。後で修道院のパンフを見ると、サンタ・アンブロージョ駅へは標高差600mで、小道を抜けて行けるようなことが書いてあったのですけど、なんか山登りになるような気がします。そう考えると、サンタ・アンブロージョ駅からタクシーで直接修道院まで行く道があるのかも謎のような気がしますので、今回我々がアヴィリアーナ駅から修道院を目指したのは、もしかしたら一番良いのかもしれなかったです。


その後は、夕方にトリノに戻り、まだ少し時間があったのでトリノ名物の塔“Mole Antonelliana”の展望台にも登りました。実はもうトリノに住んで二年も経つのですが、この塔に登るのは今回が初めてでした。東京タワーの近くに住んでいるのにまだ一度も登っていないようなものですが、改めて高いところから見下ろすトリノの街は、どこに何があるか見えて面白かったです。


それで友人たちは次の日の金曜の夕方にはクレモナに帰っていったのですけど、俺が日本に帰るまでの7月12日まで、かなり暇なことに今更気付きました。ミラノから日本への飛行機が12日だから、その前日までには一緒に日本に来るミラノのミケーレの家にお世話になると思いますが、結構空いた時間があるようです。

どうやら今までが忙し過ぎて、そんなことも考える暇がなかったようです。いきなり自転車のチェーンが外れて空のペダルをこいでいる気分です。土曜なんかは、トリノの中心街を歩いてみたのですけど、二年住んでいても今だにどこにあるか分からない場所もあるんだなぁと思いました。普段は学校と家の行き帰りしかない生活ですから、他の場所を知らないのです。もう試験も終わったし、日本に帰るまでちょっとトリノの街でも歩いてみます。しかしトリノ、最初に来たときは面白くも無い街だなと思ったのですけど、徐々に慣れてくると良いところもあることに気付きました。外国人多くて危ないのですけどね。


ちなみに今回友人たちは気を使って、べスパのマグカップを買ってきてくれたのですけど、トリノでも同じマグカップが売っているのを見て、ひどくがっかりしてました。しかし俺的には、こんな高いマグカップを自分で買うようなゆとりは無かったので、えらくうれしかったです。ちょうど前のマグカップも割れて買ってなかったし。派手な花柄もイタリアっぽくてイカしてます。しかし久しぶりに、でかいマグカップで飲んだら、分量がわからないな。どうせ今期のトリノ生活ももうすぐ終わりだから、けちけちせずばかばか飲むか。

注)今のユーロ相場は、1ユーロ165円ぐらいです。