今週はカーインテリアの授業が臨時で二つもあり、かなり疲れました。それにここ何日間か夜も眠れなく程、頭が考え事でいっぱいでした。最後の学年だから、色々と先のこととか気になったり、やっている課題のデザインだの、もうちょっと絵の描き方を考えないと、とかでなかなか寝付けなかったです。

それでもって、火曜にうまくいかなかったカーインテリアのスケッチでフィアットのデザイナーで先生のブリグーリオから伝授された鉛筆とマーカーの両刀使いスケッチを試してみたら、今までコントラストが弱くて目立たなかった自分の絵が驚くほど強くなって、マジっすかとびっくりしてしまいました。それで翌日の水曜もまたブリグーリオのインテリアの授業があったのですけど、それのためにやっていったデザインは良かったです。室内のパースも気がついたら、自由自在にいろんな角度から描けて、何故か精神面にも充実してました。ちなみに火曜の夜はぐっすり眠りすぎて、水曜は寝坊しました。

それで、木曜にはカーデザインの外側エクステリア(カーボディ)の授業があったのですけど、何故かこちらはやる気が半減してだるく、デザインして持っていった車もあまりぱっとしませんでした。先生と話をしても、いまいちこれからどんなデザインをして良いのかはっきり見えてこず、ますますやる気がなくなります。それで、次の時間にあった新しい授業の別の先生に、さっきの授業のスケッチを見せたら、コンセプトは?と聞かれて、そういえば授業の課題テーマが新しいシトロエン2CVということ以外は何も決めてなかったと言うことに気づきました。

その後、学校が終わって雨の中しょぼくれて歩いてアパートに着くと、下に住んでいるロンヒゲの仙人みたいなイタリア人ファブリッツィオが犬の散歩に出てきて、少しばかり立ち話をしてました。奴は去年うちの学校のトラスポーテーションデザインを卒業したので俺には先輩で、デザイナーとして働き始めているのですけど、そこでまた聞いた言葉は「仕事になったら、絵がへたくそでもコンセプトさえあれば、良いんだぜ。デザインするときは絶対コンセプトを決めな。良いコンセプトのデザインが良いデザインだ。」と言ってました。そこで気づいたのが、何故インテリアのほうで上手くいったのに、エクステリアのほうで上手くいかなかったのかということです。

ブリグーリオのほうは耳にタコができるぐらい「最初にコンセプトを決めてから、デザインをしなさい!」と授業中に何回も叫んでいました。おかげでそちらのデザインのほうは、インテリアだけでなく外側のエクステリアも決まり始めていて、とりあえずデザインの進むべき道は決まっているので、毎回前進はできます。そこをいくとエクステリアのほうは、シトロエンの2CVということだけは決まっていてもあとは何も無いので、進むべき方向が定まらないわけです。そんなわけでファブリッツィオは偶然現れた神様だと思って、彼の言ったことを信じてやってみます。神様はヒゲヅラだったのか。

読書

白いページ (2) (角川文庫)

白いページ (2) (角川文庫)

面白いので、また読んでます。ひとつ気になったのが、本の中で「…アリストパネスのある作品のなかで、ある親がその子にこう教えている。いいか。思案に窮したらだな、カブト虫のようにその思案を勝手に頭のまわりをとびまわらせておくことだ。そのうちくたびれておちてくる。それから手にとってゆっくり眺めたらいいのだ。ただしだ、思案がとびまわっているあいだ、しっかり手で紐をにぎっておくのを忘れるな。」という部分です。このことを開高健は、文章書くことについて引用しているのですけど、デザインでもなんとなく判るような気がします。確か他に、車のデザインについての本でヨーロッパの家具デザイナーがアイデアに行き詰ったときには、それをほっといてしばらくしてからまた取り出し眺めてみると、新しいアイデアが出て熟成されるということが書いてあったのですけど、それに似ているような気がします。しかしひとつわからないのは、「…ただしだ、思案がとびまわっているあいだ、しっかり手で紐をにぎっておくのを忘れるな。」と言う最後の言葉です。どういう意味なんだろう。



ミケーレたちの家に遊びに行ったら、夜の10時もとっくに過ぎたのにステファーニャが帰ってこなくて、ミケーレがステファーニャは?ステファーニャは?としきりに気にしていました。

このアパートには同じクラスのミケーレ、ジュリオ、アレックス、マッテオが同居していて、今年から紅一点同じ学校の超美形女子ステファーニャが加わり、男4人女1人の5人住まいとなっています。地元の彼女べったりのマッテオは別として、ミケーレとジュリオはステファーニャのことが気になるようです、いつも眠ったような顔をしたアレックスはよく分からないのですが…。ちなみに俺は、ステファーニャのこと密かに「姫」とあだ名してます。前に俺が一緒に住んでいたラファエルは「王子」だったけど、あれは頭にバカがつく王子だったので、こっちの姫とは核が違います。ステファーニャが何か言えばみんなが反応するような逆ハーレム状態のこの家では、姫さながらの感じです。

11時を過ぎた頃にようやく玄関のベルが鳴ったので、ミケーレが出ると誰かが帰ってきたようでした。“ステファーニャか?”と聞くと、しけたツラのミケーレが「ステファーニャの男友達だ」と言うので、むうミケーレに新たなるライバル出現かと思っていると、やってきたのは細身の好青年でしかも裏表のなさそうな良い奴ときたので、こいつはミケーレの負けかななどと勝手に思いました。ルーカというこのステファーニャの友達は、彼女と同じウーディネの出身で、まだトリノに来て三日目、トリノで住む部屋を探していたのですけど、その間この家に居候していて、次の日からやっと見つけた家に引っ越せるようです。

その後ミケーレは相変わらず、ステファーニャステファーニャとうるさく、姫はやっとこさ午前1時前に帰ってきました。帰ってきたときは丁度みんなでアイスを食べていて、ステファーニャは「良い時に帰ってきた」と喜び、ジュリオに食べてるアイスをねだり彼の膝の上に座ってアイスを食べてました。これを見て、“もうジュリオ確定か?”と思ったのですけど、寝る前にはルーカにおやすみのキス(ハグみたいなものですけど)を二回もしてました。ミケーレと、もちろん俺には無しです。ミケーレの方を見ると、呆れたれた感じのなんとも言えないといった表情をしてました。

ちなみに居候のルーカ、俺には「この家にはベジタリアンが3人もいて、びっくりしたよ。まあ俺も腑抜けにされないうちに部屋が見つかったので一安心だ」と言ってました。ベジタリアンのステファーニャに影響されたジュリオとミケーレがベジタリアンになって、この家は肉食2匹(マッテオ、アレックス)草食3匹のサファリパークと化しています。しかもジュリオ、この前の夏頃あたりには、卵乳製品も絶つヴィーガンまでいったそうです、今はまた食べ始めてますが。しかしチーズも食べないイタリア人なんかイタリア人じゃない!…いや別に差別とかそういう意味じゃないのですが…。ちなみにミケーレの方は、魚まではオッケーのソフトベジタリアンです。しかし食生活変えると性格も穏やかに変わりそうな気がするけど、ミケーレ見てるとそんなことはないようです。