トリノは寒さ全開で、相変わらずトリノハダカデバネズミのようにふるえてます、と言いたかったところなのですが、ここ数日はいくらか寒さが緩んだような気もします。その代わり、雨が降り続いてしょうがありません。


今日は警察署から、お呼び出しがあって行ってきました。滞在許可証が切れて3ヶ月ようやく、窓口申請となりました。朝7時に起きて、8時半には警察署に行ったのですが、相変わらずの外国人申請者長蛇の列。もっと朝早くに行って、一番乗りゲットということも出来るのですが、この明け方の寒さの中、雨も降っているのそんな真似は出来ないと、窓口が開く一時間前に行きました。そんな訳で結局手続きが終わったのが、12時半頃でして、4時間ほど費やしました。

しかし窓口に並んでいて気づくと、回りがほとんど中国人で、窓口のオッちゃんが「おい、そこの中国人。イタリア語分かるか?ここの中国人がイタリア語分からないんだ」と俺に言うので、“イタリア語はそこそこ出来るけど、俺は日本人だから中国語はまるで分からないんだよ”と言いました。その前にも他の中国人に中国語で話しかけられたので、今度警察署に行くときは日の丸に「万歳」と書いてある鉢巻を締めて行きます。これなら誰が見たって、すぐ日本人だと分かるだろう。

でも窓口のお兄ちゃんは、意外に親切で俺の名前を「イタリア語でどんな意味だ?」というような世間話までしてくるのは、少し気が楽になりました。しかし偏見かもしれないけど警察署の窓口は、女の人より男の人のほうが案外すんなり行くような気がします。女の人たちはきっついや。あと驚きなのは指紋の登録がデジタルスキャナーになっていたことです。前は別室で、黒いインクのローラーを持ったオッちゃんに、べたべたと散々墨をやられて紙に指紋を押しまくったのですけど、今回は手を汚すことなくすぐ終わって、容疑者的な気分は無かったです。でも他にもいろんな人たちが、あの機械に手をつけまくったはずだから、よく手を洗わなくちゃ、風邪でもうつったら大変だ。

そんなわけで次は、また携帯に次の日時メールが届くのを待って、そしたらその日時に行けば滞在許可証が出来上がっているはずです、理論的には…。


先週の土曜にエマニュエルが、22歳の誕生日を祝うから来てくれないかというので、アンドレア、ミケーレ、俺の三人で、待ち合わせのスケート場に行きました。ミケーレが「お前スケートできるか?」と聞くので、スケートなんぞ中学校にやったきりだから“十数年ぶりだ”というと、「すごいぜ!」という答えが返ってきました。

それでスケート場の前で震えていると、エマニュエルとその友達たちが来て、早速滑ることになりましたが、頭では忘れても体は覚えてるもので、何とか滑ることはなりまして、荒川静のイナバウワーは無理でしたが、邪魔にならない程度には滑れました。その後ビールを飲みに近くのパブに行ったのですけど、そこのパブが200種類ぐらいの世界のビールを取り揃えていて、アサヒやキリン、サッポロまで置いてあったのですけど、結局はオランダのグロールッシュというビールを飲みました。これは緑色の瓶に水筒のようなフタ付きで、見た目も面白いビールなのですが、それを見たエマニュエルの兄ちゃんが「これ持って帰るのか?もって帰らないなら俺にくれ」と欲しがってましたのであげました。エマニュエルの兄ちゃんは二年ほど前に、エマニュエルの家に招待されたとき、一緒に食事をしたので知っていたのですけど、相変わらず人の良さそうな笑いを絶やさない男でした。しかし驚いたのはエマニュエルの彼女で、初めて見たのですけど、不二家のペコちゃんの彼氏ポコちゃん?を実写化したような顔で一切人の悪口など言わないエマニュエルが、何故にこんな口の悪い彼女を持ったのかといった感じの彼女でした。まあでも口が悪いといっても、別に愛嬌があって悪い感じはしないのですが、あの毒舌ミケーレですらたじたじになるほどの喋りっぷりでした。まあ、あれはあれでお似合いのカップルなのだろうな。


ランチアのコンセプトが決まりまして、ロブスターみたいなクルマにしようと思い、辞書でイタリア語でロブスターはなんと言うのか調べてみたら、アラゴスタとありました。これはデトマゾのマングスタみたいでなかなか良い響きではないかと、ミケーレに“ランチア アラゴスタにしようと思うのだけど…”と言ったら、「おいおい、頭は大丈夫か?」と言われました。どうもイタリア人的には「ランチア イセエビ」と名付けるような感じで受けが悪いらしく、仕方なくランチア ロブスターと英語名になりそうです。しかし毎度デザインした車の名前には頭が痛いです。

そういえば、最近は日本車もマツダがコンセプトカーに「カブラ」や「ナガレ」とった日本名を付けるようになってきましたが、それでも市販車はやっぱり外国語名のようで、ミツオカ車が漢字名をつけて、あとはバイクでニンジャだのカタナだの付いている以外は思いつきません。そういえばイタリア語がついた日本車は結構あるもので、車の他にも日本でイタリア名の店なんかも見つけたときは、ああイタリア語でこういう意味だなと一人にたにたしてます。

そんな訳でイタリア車の名前を見てみると、例えば最近のアルファロメオは数字で済ませたり、フェラーリも数字や地名をつけたり、またはランチアがアルファベットのイタリア語読みなどと、具体的なイタリア名詞をつけた車はなかなかありません。最近のフィアットが、プント(点)、ウーノ(1)、ブラーボ(優れた)といかにもイタリア語らしい名前をつけているのですが、少し捻りが無さ過ぎないか?と思ってしまうほど簡素な名前です。

しかしマッテオなんかも、俺がアラゴスタ(ロブスター)て名付けたいと言ったら笑っていたけど、あいつのこの前デザインしてたシトロエンの車は「ビタミンC」だもんな、さすがにこれは日本人も付けない。いくら最近のシトロエンがC-1からC-6という市販車シリーズに始まって、C−CactasだのC-MetisseだのCを強調した名前を付けているからと言っても、ビタミンCはまずい駄洒落だろう。いや待てよ?俺が“じゃあロブスターにする”と言ったら、奴らは「ああ、そっちの方がまだ良い」と言ってたけど、英語圏の奴らから見たら、ロブスターはおかしいかもしれないな。なら、ランチアのムーザがギリシャ神ミューズのイタリア名をつけているように、こっちもロブスターなら海神のあたりの名前でも付けようかな?ポセイドンはPOSEIDONEか、少しいまいちだな、ネプチューンはなんだ?NETTUNOか、熱湯みたいだ、むむ、なんか日本人的にはビシッと来ないな。やっぱり英語でポセイドンかネプチューンにでもするか?それももうありそうだな。もういっそ日本名にでもするか!ランチア 海坊主だ!どうだ!コンチクショウ!

そういえばこの前行った北イタリアのトレントで、アンドレアの家からクルマで30分ほど行ったところにサンマルティーノというスキーリゾート地があったのですけど、そこでHOTEL SAYONARAと言うのを見ました。あんな立派なホテルのなのに、とんだ名前をつけちゃって。ちなみにミケーレなんかも「日本語でperpetuoはなんて言うんだ?」と聞いてくるので、“永遠”と答えると、自分の日本名の苗字にしちゃってたから、びっくりです。俺のことをアラゴスタ(ロブスター)でバカにはできないぜ、ミケーレちゃん。