■

新装版 功名が辻 (1) (文春文庫)

織田水軍の将・九鬼嘉隆 戦鬼たちの海 (文春文庫)

用心棒日月抄 (新潮文庫)

真田騒動―恩田木工 (新潮文庫)

用心棒日月抄が良かったです。話は毎回一話完結なのですが、脱藩して江戸で用心棒稼業をして暮らす主人公とそのころの忠臣蔵騒動を上手く組合わせて、流れ的にも一冊の本としてまとりを持たせている所に作者の上手さが感じられます。前後しますが、前に読んだこの本の続編「孤剣―用心棒日月抄」も江戸に逃げた藩の機密を持っている男を探しながら、用心棒家業をするという作りになっていて、そっちも良く出来ているなと思いました。しかしあと他に続々編と続々々編もあるのか。これがもし全部同じ主人公の話だとしたらあまりに運がなさすぎる主人公に同情します。

真田騒動も良かったです。江戸中期極貧に陥った松代藩の財政を立てなおすために任命された家老恩田木工が、次々に失脚した前任者たちを教訓に清廉潔白な立てなおし政策を実行する話です。その中で、恩田木工が遊びに行った旧知の和尚が、自らも質素な生活を実行している松代藩の殿様に遠慮してか、「殿にはもうしわけないが....」と言って酒と漬け物を出して、二人でこっそりと笑いながら酌み交わす場面は、藩の家老ともあろう者が子供のイタズラの様に酒を飲むようで、とても愛敬が感じられました。