行ってきました、ドイツのミュンヘン。卒業制作BMW一発目のプレゼンテーションです。
一昨日の13日、昼に貸し切りバスでトリノを出発して、オーストリアを通ってドイツに入ったのですが、たったの一泊二日想像を絶する強行軍となりました。


まず、正午12時に学校の前から出発して、バスは高速道路に入って東へと思ったら、いきなり早速ノヴァーラのアウトグリッル(ドライブインパーキング)に停まり昼飯です。この時点でもうすでに三時。その後ミラノで渋滞につかまり、予想外の時間ロス、そしてバスの中にはさっきのパーキングでバーガーキングを食べた奴らが、おまけの紙の王冠を被って、その辺王様増殖中状態、ブレーシャを通る頃にはもう日が暮れていました。その後バスは一路進路を北に変え、オーストリアに向かい、ボルツァーノのパーキングでまた休憩。ドロミテ渓谷の山の中にあるボルツアーノは日暮れが早くもう暗いです。山の向こう側に実家があるアンドレアは、「今が夕方6時、この分だとミュンヘンまであと5時間以上はかかる」との観測をしまして、学校側が予定している夜9時にミュヘン入りという計画は早くも崩れ去っています。

その後真っ暗の道の中、気がついたらオーストリアに入っていまして、結局心配されていた俺の滞在許可証の問題も国境でのチェックがなかったので、無事スルーとなりました。ちなみにこの先のオーストリアドイツ間のチェックはないようです。それでまたオーストリアのパーキングで休憩夕食となってから、一気にミュンヘンへと向かったのですが、バスの中はすでに酔っ払いと、疲労で死に掛けた生徒たちの地獄絵図と化していて、ストレス感はマックスとなっていました。

そしてようやく、深夜12時過ぎに高速を降りてミュンヘン入り。窓の外を見ると、街道の脇にははまるで正方形の同じ形の家がいくつも並んでいて、しかもその四角い家に立った四つの入り口と窓の穴が開いてるだけの装飾ゼロデザイン。その後工場を見てもビルも見ても、さっきの家を積み重ねて穴を増やしただけのようなシンプルデザインなので、同じヨーロッパでもイタリアとこんなに違う国があるのかとびっくりしました。

そんなこんなで、これでようやくホテルで眠れると安心したのもつかの間、何故かドイツ語が話せるスイス人たちが、バスを降りてコンビニに入って何かを尋ねています。それで、どうしたんだ?とみんなで首をかしげていると、誰もホテルがどこにあるのか分からないということが判明、というかナビゲーターの道路情報が、ドイツの道を正しく表示せず、道にすら迷っているという絶望的な状態となっていました。どうやらインターネットでダウンロードしておくべきドイツ地図を運転手がしていなかったことが、その原因のようです。そんな訳で同じ道を行ったりきたりして三周もして、もうみんなが「きっと学校の奴らはホテルを予約していないんだ、このバスが俺たちのホテルだ!このままだと明日は朝に直接BMWにいくことになるぞ!明日飛行機で来た校長に会ったら、絞め殺してやる!」と発狂状態になったところで、我がクラス一胡散臭いハッタリ師ポーランド人のテオフィルが運転手の所に行って、夜中のミュンヘンで驚くべきナビゲーションぶりを発揮。見事にホテルを発見したテオフィルにはバスの中から拍手の喝采が起こっていました。ここで時計は深夜の1時半、ようやく13時間に及ぶバス地獄は終わりました。

それでその後2時にホテルの部屋に入って寝たのですけど、同室のマッテオがいびきをかいて結局眠れたのが4時頃、まったくの疲労感しか残らない睡眠となって翌日となりました。


翌日は朝の7時半に朝食、その後すぐ8時過ぎにバスで出発となったのですけど、ここで生徒が二人ほど足りないことが判明。学校側は「四回も部屋に電話したのに来ないほうが悪い。BMWとの約束の時間に間に合わなくなる。」と主張。一方生徒側は「ふざけんな!お前らは昨日、5時間も遅れただろう!」と怒ってバスを止めろとめろということになりました。こういう場合日本なら相手側の約束を守らなければ成らないから、遅れる奴が悪い、ということで置いていくと思うのですが、こういうところがイタリア人、だらしない奴でも見捨てて置いていくようなことはしないのです。でも20分ほど遅れて残りの二人もバスに乗り、無事に出発。しかしBMWデザインセンターに着くのはやはり、15分ほど遅れたようです。

BMWのデザインセンターに入ると新型のSUV X6やZ4の試作車などが走っていて、みんな興奮してします。それで、ある建物の一角に入り階段を上ると、プレゼンテーション用の大部屋があり、そこで早速作ってきたプレゼンテーションボードをパネルに貼り付けたり、プレゼンテーション映像を試してみたりしました。ボードのほうはもう全員印刷した物なので問題はないのですが、映像のほうは色々問題が出てきて大変なことになっていました。そもそも、それぞれが違ったプログラムを使って、色々な形式で保存したファイルをひとつのPCで動かすのだから上手くいくはずがありません。プレゼンテーションが始まると、映像が止まったり、消えたりするグループが出てきました。そして我々も保存したパワーポイント2007の形式では音が出ないことが判明、急遽保険に用意していたビデオ形式ファイルを使うことになりました。

それでプレゼンテーションはBMWの責任者と二人のデザイナー、3人を前にして次々と発表していたのですが、途中でパネルの裏から、素っ頓狂なテンションの人物がやってきました。誰だ?と思い見ると、それがBMWで一番有名なアメリカ人デザイナー クリス・バングルでした。クリス・バングルはBMWのデザイン本部長で、見た目50代中頃のナイスダンディーですが、しゃべりだすとイタリア人も舌を巻くテンションの高さ、おまけにむかしはフィアットでも働いていたので(クーペとバルケッタは彼がやったそうです)イタリア語も流暢なもの、うちの学校の校長や先生たちと握手をして、冗談を言いまくっています。この人物の登場で一気に今までの重苦しい場の雰囲気は吹っ飛び、時間がほとんどないクリス・バングのためにとりあえず貼ってある、プレゼンボードをみんなで見回ることになりました。一グループあたり1、2分ぐらいでクリス・バングルは的確に評価をしていって風のように去っていきましたが、ああいう人物が世の中にはいるのだなと思うような、オーラの強さを見た気がしました。

結局マッテオと俺のプレゼンテーションはビデオ形式の少しばかり動きの悪いものでやったのですが、言いたいことが分かれば見た目が悪くても良いと思って、あまり気にはしませんでした。それで相手も、俺たちのプレゼンテーションについて何か言っていたのですけど、英語だったので俺はあまり分かりませんでした。マッテオは好感触だったと言ってましたが、しかし本当のところどうだか真相は分かりません、マッテオ楽天家だからなぁ。

まあそんな訳で、とにかくひとつ終わりました。この後、今ある16グループが12グループに絞られるとの話ですが、それすら誰にも真相が分からないです。要するに分からないことだらけです。

それで昼の2時ごろプレゼンテーションが終わってイタリアに帰る前に、少しばかりミュンヘンのオリンピックスタジアムがある場所、BMW本社ビルすぐそばの巨大なショールームBMW WORLD」を一時間足らずばかり見て回りました。この建物がすごいです。外はこれでもかというガラスを使ったダイナミック建築で、中はただのショールームだけでなく、レストラン、アンテナショップ、あとは子供たちが試したりして学べる科学技術のアトラクションなどが有り、それらの全てのデザインセンスが優れているのに、かなりやられてしまいました。なんと言うか口で上手く説明できないので、ここのサイトをこっそりお借りします。
http://www.bmw.gotik-romanik.de/BMW%20Welt%20Thumbnails/Thumbnails.html
すみません、写真はカメラ忘れました。あとで誰かが取った写真を貰おうと思います。
しかしこの建築は隣にあるBMWの本社とともにかなりの異彩を放っているのですけど、向こう側にはさらにミュンヘンオリンピックの時のスタジアムが異彩を放っているのと、あまり周りの景色との違和感はありませんでした。というよりもバスの中から眺めていたミュンヘンの景色を見ても、この国ならBMWのような会社が生まれることが自然なことだなと思いました。なんというか、まず都市計画のシステムが全て精密に上手く出来ているように見えて、それでいてストレスを感じさせるところがない街並み。歩道なんかもきれいだし、継ぎはぎだらけで意味もなく紙くずが落ちているトリノとは訳が違います。その辺の道を見ると大げさに言えば、靴を脱いで歩けるんじゃないかと思うぐらい清潔感があります。
それに朝の交通ラッシュ時でも車が溢れているように見えて、意外にスムーズに動いている気がしたのも、都市計画が上手く行っているような気がしまして、帰りの高速道路いわゆるアウトバーンを走っても回りに土手のような土を盛って日本ようにコンクリで固めたりせず、草の植わった緑の騒音遮断壁にしたりと、なんと言うかランドスケープが優れていて、自然をベースにした都市計画の上手さ、人間が未来に自然と共存する答えみたいなものがあるような気がしました。

ちなみにドイツビールは体も疲れきっているし、バスの中で気分が悪くなったらいやなので飲まなかったのですけど、フランクフルトソーセージのホットドックだけはBMWショールーム近くの小さな駅売店で買って食べました。こんなところのものだからたいした味じゃないだろうなと期待しないで食べたら、恐ろしく美味くてびっくりしました。こんなところでこんなに美味いのだから、レストランで食べたらショック死するかもしれません、良かった食べなくて。


その後、午後4時半にBMWショールームをあとにしてミュンヘンを出発、またトリノへの地獄の強行軍です。結局帰りは、午前3時に到着と結果12時間を切った時間で行きよりも早く着いたのですが、疲労感はすさまじく家に帰ったから死ぬように眠りました。こんなにきつい旅は、イタリアに一番初め来たときの東京発インドネシア経由ローマ行き28時間耐久旅行以来のものでした。